平成16年新潟県中越地震 現地調査 速報
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第0.2版 : 2004-10-28
第0.1版 : 2004-10-27
第0.0版 : 2004-10-25
はじめに
平成16年10月23日 午後 5:56に新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8の直下型の地震が発生し,小千谷市では計測震度6強が観測された.この地震を,気象庁は「平成16年(2004年)新潟県中越地震」と命名した.非常に強い地震で,小千谷市,山古志村,長岡市,十日町市などを中心に,大きな被害が生じた.平成16年10月25日朝現在,死者は23名以上,負傷者2200人以上,避難者は8万2000人にのぼっている.
この地震について,京都大学防災研究所 助教授 澤田先生の先導のもと,地震発生の翌日早朝より,現地で第一次調査を行ったので,被災情報などについて速報として情報を掲載する.なんらかの参考になれば幸である.
同地震においては,道路などの損傷が激しく到達できない箇所も多く,情報も十分でなかったため,調査範囲は限られている.また,被災した家屋の内部等の写真は撮っていない.甚大な被害等については,テレビや新聞等のマスコミ報道,他の調査機関による報告等も参考にされたい.
調査の期間と同行したメンバーは以下の通りである.
- 調査日時:平成16年10月23日深夜〜25日早朝(現地調査は24日)
- 調査団メンバー:
- 澤田純男(京都大学 防災研究所)
- 高橋良和(京都大学 大学院 都市社会工学専攻)
高橋先生の調査報告
- 本田利器(京都大学 防災研究所)
なお,文中で()内の番号は,段落のすぐ下に配置して写真の番号を示している.
調査報告
- 柏崎市〜小国町:
10月24日午前6:30頃柏崎市に到着した時点では,停電のため信号の多くが動作していなかった.国道8号沿いのセブンイレブンは停電の中で営業していた.
柏崎から小千谷市には向かう国道291号では,北条(きたじょう)などでマンホールの浮き上がりが見られ,七日町の路面の陥没による1mもの段差(2105,2106,2110),斜面崩壊(2112)などがみられた.同様の程度の路面の損傷は,小千谷市から十日町市などでは散見された.
また,武石トンネルを抜けて小千谷側では,道路の南側に位置する斜面の崩壊(2104)もみられ,斜面の下では噴砂の跡(2103) も見られた.
- 小千谷市(小千谷インター出口近傍)
小千谷市に入り,291号を跨ぐ関越自動車道の橋脚(桜町橋.小千谷インター出口そば)では,東側で桁部が若干衝突した跡(2115)が見られた.基礎部では噴砂跡(2119)も見られた.支障等に損傷は見られない(2116)ようであるが,詳細は不明.
小千谷インター(調査時点で通行止め)の料金所では,路面の伸縮部が若干の損傷をうけていた(2124).また,料金所正面の2階建ての民家は,一階がつぶれ(2121,2122),石垣が崩れるなどの被害(2123)が生じていた.周辺の建物でも,かわらの破損(2128)等など被害は多数見られた.
桜町橋から西へ100m程度の箇所にある石材店では,商品の墓石の転倒(2117,2118)が見られた.墓石はそれぞれがバラバラの方向に転倒しており,方向に目立った傾向は見られなかった.近傍で生じた直下型であった地震であるが,強いディレクティビティは確認できなかった.店舗そのものにも損傷が見られるが,甚大なものではなく,方向性が顕著に現れない短周期期成分が卓越した地震動によるものであった可能性もある.
- 小千谷市 (元町・本町・若葉など)
市内では,液状化によるマンホールの浮き上がり(2147,2149)が何カ所も見られた.(この写真を撮影しているときに,かなり強い余震を感じた.)また,液状化によると思われる電柱の傾倒(2151),交通信号機の転倒等(2150) も複数箇所で見られた.切れた電線に接触して事故に巻き込まれたと見られる車両(2152) も放置されていた.周囲の地盤が60cm程度沈下したマンホール上に取り残された形となった車(2993)も見られた.
また,本町の二荒神社でも,鳥居などが被害を大きな被害(2194,2195)を受けている.
なお,国道291号は,上越線を跨ぐ箇所で1m程度の段差(2137)があり,国道17号を使っての川口市への移動ができなかった.
- K-Net 小千谷観測点:
最大加速度1500ガルで震度7に相当する強震記録を観測したK-NET小千谷の観測点(2197)は,小千谷小学校の校庭の端に位置する.
同地点は,北西側に校庭が広がっており(2200),平らで開けた場所である.南西から観測地点を眺める(2202)と,南西側に水田が広がり,北東側に体育館が位置することが分かる.水田が接していることから,比較的軟かい地盤(を埋め立てた地盤)である可能性もあり,その影響は考慮する必要はあるが,比較的良好な観測条件であるかと思う.
なお,我々が本観測地点を調査している時(2004年10月25日14時21分)に,マグニチュード5.0(小千谷での計測震度5強)の余震が発生し,衝撃的な強い揺れに襲われ,強い不安感を感じた.
この観測地点の周辺では,マンホールの浮き上がり(2201,2205)や浮き上がったマンホールに衝突して転倒したと思われる車両(2204)等が見られる.目だった外傷のない建築物(2206,2209)もあるが,損傷を受けた建物(2210,2203)も見られた.また,2,3本の通りを隔てた家屋には半壊した家屋なども見られており,近くに位置する極楽寺(訂正)慈眼寺も大きな被害(0089,0090)が見られている.なお,このお寺では,墓石のほとんど全てが転倒している.
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長岡市(長岡駅周辺)(訂正)小千谷(小千谷駅周辺)(長岡技大 下村先生ご指摘ありがとうございました.)
(再訂正)小千谷駅周辺の商店街(2133)では,道路面に目立った被害は見られなかった.しかし,店舗には,柱の損傷(2134)や,壁面の剥離(2131)等の被害が見られた.なお,外傷が目立たない店も含め,店内では棚や装飾等が損傷するなどの被害が生じているようである.
- 上越新幹線 脱線地点(十日町地点)
上越新幹線の脱線した地点から,数10m〜数100m程度東京側に位置するラーメン橋脚には様々な程度の損傷(2183,2185,2186,2188,2189,2191)が散見された.橋脚には昭和52年着手,昭和54年竣工とあった.
また,これらの橋脚よりも数10m程度長岡駅側に位置する橋脚の基部では,液状化による噴砂が70〜90cm程度に達した跡(2162,2159,2160)や,大きく変位した形跡(2157,2158,2161)も見られた.
さらに,停車した車両の下に位置する壁式橋脚(2180)の桁取り付け部にもコンクリートが剥離する損傷(2167)が見られた.
ただし,これらの損傷が脱線の直接の原因であると判断される訳ではない.強い強震記録が観測された地震に対して良い耐震性を発揮したものと思う.
- 小千谷大橋
国道17号,信濃川を跨ぐ小千谷大橋の南東側から2本目の橋脚(2139)では,北東から南東側にかけてコンクリートが剥がれ落ちる損傷(2140)が見られた.南西側の面では,X字のひび割れ(2143) も見られている.横筋はほぼ20cm間隔(2142)で配置されている.
- 与板橋近くの堤防
与板橋近くの堤防では,堤頂に幅10〜40cm,深さ1.5〜2.0m程度の亀裂(2215,2217)が,数10mにわたって生じ(2214),全体が沈下している区間もあった.
さいごに
本報告はあくまで速報である.今後,強震記録や詳細な被害調査等に基づき,詳細な検討が行われることが期待される.
なお,本報告の内容は,本田個人の見解であり,澤田先生,高橋先生,または,京都大学防災研究所の見解ではないことを付記しておく.
最後までおつきあいいただき,ありがとうございました.
ご意見,ご指摘等があれば,是非ご連絡をお願いいたします.(連絡先:)
謝辞
本調査においては,京都大学防災研究所澤田純男先生には,地震発生直後に現地に向かうリーダーシップをとっていただいた.京都大学都市社会工学専攻高橋良和先生には,急な申し出を快く承諾して行動を共にさせていただいた.本報告で使用している写真には,本田が撮ったもののほか,澤田先生や高橋先生によるものも含まれている.ここに記して,謝意を表する.
以上.(文責 本田)