2000年鳥取県西部地震の現地調査速報


10月6日午後13:30に発生した鳥取県西部地震について,10月7日,8日に現地 調査を行った.その結果について簡単に報告する.

概 要

調査は,澤田先生(京大防災研),高橋先生(京大土木),小野祐輔(京大土木博士課程)そして本田(京大防災研)の4人で行った. 現地では,行程の一部で,盛川仁先生(鳥取大),池内先生(同)の調査とも共同で調査を行った.
10月6日深夜に防災研を出発し,現地には同日午前5:30ころ到着. 途中,米子自動車道 江府─米子間は,地震直後より通行止めであった. 調査は,6日午前6:00ころから開始し,翌日16:00頃に終了した.
(高橋先生らによる第2報もあります.)

◆竹内(たけのうち)団地周辺

境港市東側に位置する,東西1km南北1.5km程度の埋め立て地内にある団地. 埋め立て地へ渡る3橋(北から竹内橋,美保橋,夢港橋)のうち,美保橋は段差が生じており通行不可. 竹内橋は,アスファルトがせり上がっており,若干の段差があるが通行可.
島北部の竹内工業団地内で液状化による噴砂(写真)
次に埋め立て地北部にむかう. 竹内緑地(公園か?)周辺とその北側の岸壁で液状化(写真). 県水産試験場内でも噴砂(写真)が見られる. 試験場から,南南東へ進む道ではそれほど被害は無い.その道の突き当たりで 路面のうねりと液状化による噴砂(写真)が見られた.
夢港橋もかなり被災している(写真)が,通行は可能. 夢港橋のから北へ伸びる道は起伏が生じている(写真). また,河川内には大量の土砂が堆積している(写真)が,噴砂か地震前からあった土砂かは不明.

◆昭和町

昭和町南側の昭和町南埠頭では,岸壁より10mほど内側までの陸側が沈下したよう(写真). 噴砂も見られる(写真)
昭和町東端の岸壁(「潮見町」よりも西側)では,岸壁が若干はらみ出しているが被害はほとんどない(写真)
昭和北埠頭被害も比較的軽微(写真)
昭和北埠頭の西に地方卸売り市場が位置する.被害は比較的(写真)小さい. ただし,その卸売市場の埠頭(通称「カニカゴ埠頭」?)では,噴砂(写真)(写真),柱の傾斜(写真)(写真),地盤の沈下,岸壁のはらみだし(写真)などの大きな被害. マスコミの方も多数.
同埠頭から,境水道大橋(鋼トラス橋)(写真)が見える. 同橋には被害は確認できなかった.

◆上道(あがりみち)神社

マスコミでも大きく報道されている,倒壊した神社(写真). 境港町の上道町に位置する.前半分の入り口部分は完全に倒壊している. ただし,神社の後ろ半分(本堂部分か?)(写真)や,隣接する酒屋(写真)には,ほとんど被害は生じていない. 周辺のほとんどの家屋にも,被害は生じていない. 一軒,倒壊した納屋があった(写真)が,別の場所にあったものを移動させてきておいてあったものであり,比較的強度の低いものであったらしい.(近所の住人の方談)

◆渡町

渡町の墓地では墓石が多数転倒している(写真)
墓地周辺で深刻な被害を受けた家屋は少ないが,一軒だけ倒壊しかかっている家屋があった(写真)

◆中浦水門

境港市西側の中浦水門で損壊の被害が生じている. 岸壁の流動(写真)に伴う地盤沈下(写真)や路面の陥没(写真)などが生じている. ただし,8日の段階で,すでに応急措置により車両の通行を許していた.

◆江島工業団地

団地内では,液状化による噴砂(写真)が見られた.

◆中海干拓地

弓浜北橋を越えて,中海干拓地に渡る. 被害ではないが,液状化による噴砂跡が,かなり長く線状に続く,珍しい現象が見られた(写真). また,電柱が地中に1m程度まっすぐに無傷で沈下していた(写真). 干拓地南端の干拓用水路で,水路の壁が数10mに渡って破壊. 地震翌日の8日には修復工事を行っていた(写真)

◆伯備線(根雨)

伯備線の,根妻トンネルの近辺で急斜面が崩壊土砂崩れの被害(写真). 線路下の盛土が崩れている箇所もあった.(写真)

◆日野町(下榎)

家屋が多数被災した地区. ほとんどすべての家屋に何らかの被害が生じており,ブルーシートがかかっている. 深刻な被害多数. 写真については,新聞などで多々紹介されているのでそちらをご覧いただきたい. (現地では,復旧作業の最中であったので写真の撮影は遠慮しました. 遠景写真を用意しました.)

◆錦海町

米子市.米子駅の西側にある埋め立て地(だと思われる). 岸壁はかなりはらみ出している. 岸に沿っている公園では岸に平行なひびが何条も生じている(写真). 液状化による噴砂(写真)や,地盤の損傷(写真)が見られる. ただし,市営住宅や家屋は岸から若干距離があるため,損傷はほとんどない(写真). 断水などの被害もなかった(住人談).

◆旗ケ崎(中央食品卸売り団地)

米子市.米子港の西側に位置する埋め立て地. 冷凍食品工場等がある. 一件あまり被害はなさそうである. しかし,東南端で地盤が沈下している(写真). (沈下がすべて地震によるものであるかは未確認.) この近くで噴砂も見られる(写真). また,埋め立て地全体が(地震前からかも知れないが)沈下しているようである.
埋め立て地の西側の米子ガス周辺では,噴砂(写真)や地盤の沈下,それに伴う建物の傾斜(写真)などもみられる.

◆気象庁米子観測所の地震計

ご厚意により,気象庁米子観測所の地震計を見学させていただいた(写真). 計測震度5強を観測した地震計である. 地震計はコンクリートの基礎に設置してある. 基礎はラバーで測候所の建物との縁を切ってある.

◆気象庁境港測候所の地震計

ご厚意により,気象庁境港観測所の地震計を見学させていただいた(写真). 計測震度6強を観測した地震計である. 地震計が設置されている基礎と,測候所の建物との縁は切っていないようである.
測候所の建物には,甚大な被害は見られない(写真). 測候所の正門前の家屋では,棟瓦が飛ぶなどの被害が生じていた. ただし,近辺のその他の家屋では深刻な被害は生じていないようである.

さいごに

本地震は,気象庁によればマグニチュード7.3で,一部のマスコミが「神戸を越えた」等の表現をしていたが,不幸中のさいわいにして,現地の被害は,神戸の被害に比較すれば少ないものであった. 計測震度6強を示した境港においても,その計測震度から短絡的に予想されるような被害はなかった. しかし,日野町下榎地区のように甚大な被害を被った地区をはじめ,被害が深刻なもの であることにかわりはない.

以上の内容は個人的な主観によるものもあり,必ずしも正しい情報であることを保証するものではありません.ご承知おき下さい.また,写真の一部は澤田先生よりお借りしました.

文責&著作権 ほんだりき
最終更新日 2000年10月15日