NEXCO West USAインターン(2023.10-25,2023年度修士2年・長崎元)

私は、2023年9月21日から10月15日まで米国バージニア州にあるNEXCO West USA(NWU)(写真1)でのインターンシップに参加した。NWUは赤外線技術を用いたインフラ点検を行う会社である。また、米国への市場進出のパイオニアとして日本企業のコンサルティングも担っている。同社は既に米国のインフラの健全度調査で100件以上の業務受注実績を挙げているが、米国では2021年のバイデン政権によるインフラ投資雇用法の可決により、今後ますますインフラの建設及び維持管理に多くの予算が充填される見込みである。また、現在5件の道路PPP事業でサブコントラクターとして舗装及び橋梁の健全度評価の技術にて参入を果たし発注者からも高評価を得ている。将来的には道路のLead Operatorという役割でコンセッショネアのチームに加わり、その先には道路PPP事業への出資も視野に入れているという。

NEXCO West USA

インターンシップにおける活動内容は主に二つであり、米国PPP事業への進出拡大に向けた調査と、現場での道路点検業務である。

米国PPP事業への進出拡大に向けた調査に関しては、米国における道路PPP事業の現状調査から、日本での事業との比較、それらを踏まえた課題分析までを行った。米国では2000年代後半から道路PPPが一般的になり始め、今後もPPPの更なる拡大が予想されている。PPPアプローチにより、インフラプロジェクトはコスト削減、工期短縮、民間セクターによる投資促進等の便益をもたらすと考えられている。また重要なメリットの一つに、政府主導のプロジェクトでは公共調達に組み込むには適用実績不足であると考えられていた新しい先端技術を、民間セクターの判断によって適用できることである。前述のように、NWUはPPPのコンセッションにおいてLead Operatorの一員となることを目指しており、同社は米国PPP事業への進出拡大戦略を模索している。そこで私は、日本企業にとって米国でのPPP事業の契約獲得にはどのような障壁が存在するかを明らかにすることを本活動での目的とし、調査業務を行った。

道路点検業務では、NWUの点検チームと私の計4人で事務所から車で1時間程度のメリーランド州にある対象道路橋の現場へ向かった。調査の目的は、道路橋のどの部分が傷んでいるのかを特定し、更新やメンテナンス業務の効率化を図ることである。米国では1920年代のニューディール政策以降に大規模に建設されたインフラの団塊的な老朽化問題に直面しており、道路延長は日本の5倍を有する。したがって、道路の欠陥箇所の特定は、急拡大するインフラ維持管理需要に対応することに貢献する。米国では道路橋点検を路面の上から行うのが一般的であるため、同社は日本の赤外線検査技術を路面上からの検査用にカスタマイズし、さらに検査結果を可視化するシステムを構築した。これにより、検査機器を搭載した走行中の車両でも検査が可能になり、交通規制を回避できることが魅力である。今回私は本車両に検査機器を取り付ける段階(写真2)から、赤外線カメラ等機器の調整(写真3)、実際に車両に乗車し検査を実施する(写真4)までを行った。対象橋梁は約1kmであり、約30分間で全ての車線で検査を行った。

検査機器の取り付け

赤外線カメラ等機器の調整

検査の実施

本インターンを通じて、日本企業の米国進出に関する知見を得るだけでなく、日本企業が実際にどのような困難を抱え、どのように克服していくべきかについて、NWUメンバーと議論をすることができた。また、実際に日本のインフラ技術が海外に輸出され、その技術が現地の課題を解決している現場について、実習を通して学ぶことができた。遡ると私は大学院入試で、現在在籍中の研究室を希望した理由の一つが、インフラ技術の海外輸出というキーワードに興味を惹かれたことだった。本インターンを通じてその現場を見ることができたことは、私の修士生活において非常に貴重だった。また、これまで指導教員である加藤浩徳教授から、現地に実際に足を運んで自らの目で現状を把握することの重要性を学んできた。今回はその学びを活かし、コンフォートゾーンから抜け出してそれを実際に行動に起こすことで座学以上の学びを得られたことは、社会基盤学の学生として大きな実りだったと考えている。